R pro

出典: Astrophys. Lab., Kyushu Univ.

超新星爆発とr-過程元素合成

九州大学理学研究院  橋本 正章

R-process Nucleosynthesis in Supernova Explosions Kyushu University  Masa-aki Hashimoto

   超新星爆発の際に元素合成が起こって宇宙空間に放出され、宇宙初期で生成される軽元素以外のほとんどの元素が生成されたという筋書きはほぼ認められている。細かく見ると、元素は恒星進化過程、超新星爆発過程の両方で生成される。確かに超新星1987Aが太陽の20倍程度の大質量星の爆発つまり重力崩壊型超新星であったことが元素の起源に対しても大きなインパクトを与えた。図は爆発直前の星内部の元素分布であるが、軸は太陽質量単位で書いている。実際、この初期モデルを用いて星の進化段階での元素合成と爆発的元素合成を組み合わせて酸素から鉄までの元素の観測量を説明することに成功している。特に、放射性元素56Ni、57Coの生成量を一応、観測と無矛盾に決めることができた1)。


しかし、爆発直前のモデルにも不定性があり、その結果放射性元素56Niの生成量も確定できず、観測される光度曲線を再現するのに都合の良いようにモデルのパラメータを調節している。超新星爆発に起因する重元素合成もSN1987Aの研究で注目が広がったといえる。実際に星の進化段階でヘリウム燃焼に伴いs-過程が起こることが確かめられた。ただし大質量星では質量数70程度までのs-元素しかできないとされており、SrとBaの観測量は説明ができないままである。さて、s-元素を種にしてp-元素合成が起こるという定性的な計算があった。しかし、p-元素は太陽系組成のなかでも存在比が極端に低いものが多く、以前からその起源がなかなか同定できなかった。SN1987Aの爆発的元素合成により大部分のp-元素が生成されることが分かった。ここで重要なのは現実的な星のモデルに基づいていることである。しかし、r-過程による元素合成が超新星爆発でどのように起こるか不明な点が多い。以前の我々の計算では超新星における爆発的元素合成の計算を行う際、鉄-コア近辺にエネルギーを注入して衝撃波を発生させ高温状態を得た。この手法は恣意的と言わざるを得ない。そこで我々は最近、大質量星の重力崩壊、バウンス、爆発のシミュレーションを通じて重元素合成の可能性を調べている。一方、Boltzmann方程式でニュートリノ輸送を取り扱うことは球対称の計算では行われており、比較的軽い大質量星では弱い爆発エネルギーは得られている。一般的には、長時間のシミュレーションが困難なため、爆発が成功するのかよく分かっていない。我々は2次元の磁気流体コードを用い、重元素合成、特にr-過程が起こるかどうか調べてきたが、断熱の条件で爆発するモデルを解析すると、太陽系組成におけるr-元素の第1から第3ピークまでを一応再現できるモデルパラメータがあることが分かった 2)。


しかし、ニュートリノ輸送を考慮するとこのシナリオは破棄される可能性もある。残念ながらニュートリノ輸送を考慮すると計算時間の制約により爆発が起こるか否か確かめる事が難しい。そこで、ニュートリノ輸送には近似的手法を用いてでもシミュレーションをやり直してみる必要がある。図はその一例であるが、第3ピーク近傍のr-元素はかなり再現できているが、その他のr-元素のピークの再現には足りない。この爆発モデルはマグネッターの起源と関係しているのではないかと思われる。


1) 質量の進化と放射性元素合成: 日本物理学会誌(最近の研究から) Vol. 47, No. 7, 1992, 568, 橋本正章 2) R-Process Nucleosynthesis in MHD Jet Explosions of Core-Collapse Supernovae:S. Nishimura et al., 2006, The Astrophysical Journal, Vol. 642, No. 1, 410 3) R-Process Nucleosynthesis in MHD jet Explosions of Core-Collapse Supernovae: M. Saruwatari, M. Hashimoto, S. Fujimoto, R. Fukuda, Journal of Astrophysics, Vol. 2013, in press.

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