暗黒エネルギー

出典: Astrophys. Lab., Kyushu Univ.

宇宙論のコーナー、その2

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宇宙進化のことばっかり書くと、宇宙論の研究ばかりしているような誤解を与えてしまうかな(-_-;;;) うちらの研究室は、むしろ宇宙論はアウトローな扱いなのだが。 と、いうことで、宇宙を満たしていると考えられている暗黒エネルギー に関する研究を行なっています。

--Rnakamura 2013年1月21日 (月) 10:44 (GMT)

*履歴
** 2012/3/5 (巫女の日)深夜に書き始める
** 2013/3/11 記事とグラフを追加 

目次

とりあえず概要的な話

ハッブルの発見以来、宇宙膨張が宇宙の研究のうえで基本的な考えとなりました。そこで、次に興味が湧くのが、「宇宙はそのまま膨張を続けるのか否か」ということです。その答えは、『宇宙に存在する物質の密度などによって異なる』です。そこで、宇宙にどのようなエネルギー要素が、どの程度存在するのかを調べる必要があります。


まず、宇宙の膨張速度の変化は、数学的に方程式で記述されます。最も一般的な方程式が、アインシュタイン方程式から求められたフリードマン方程式です。

H^2 = \frac{8\pi G}{3}\rho - \frac{k}{a^2}

左辺は膨張速度に対応する項で、右辺はエネルギー密度[1]です。k は曲率です[2]。密度は、光・ニュートリノ・物質・暗黒物質などの密度が含まれています。 右辺にどのようなエネルギーが含まれているかによって、膨張速度の変化が変わります。つまり、膨張速度を測定することができれば、宇宙のエネルギーはどの様な成分が占めているかがわかり、そこから将来の宇宙の運命が予測できるわけです。

調べてみたら暗かった

図1 超新星は思ったより、暗かった!!!?

1998年、今なお非常に大きな話題となっているある観測結果が報告されました。2つの観測グループにが、Ⅰa超新星と呼ばれる天体を観測し、宇宙膨張の変化を調査した結果、加速していることがわかったのです。最新の観測結果(エラーつきの印)と、いくつかのモデル(曲線)による理論計算のグラフが図1です。横軸のredshift (赤方偏移) は地球から超新星が遠ざかっていく速度に対応すると思ってください。縦軸は明るさ(正しくは、距離指標(distance modulus)という量) を意味します。なお、星の明るさは等級[3]と呼ばれる量で表されます。星の明るさは地球から遠い天体ほど暗くなるので、地球からの距離に対応しています。等級が大きいほど暗いということを意味します。もし、星や銀河などの物質が宇宙を満たしているなら、一番下の曲線上に観測データがあつまっていくはずでした。しかし結果は、期待されていたよりも暗く観測されており、これはずっと遠くまで天体が離れていることになります。つまり、膨張は加速していることを意味しています。

この加速膨張の理由として、考えられる理由は大きく分けて2つあります。

  • ①暗黒エネルギーと呼ばれる未知のエネルギーが存在すること、
  • ②一般相対性理論を修正すること[4]

です。図1の曲線は、①に基づいて計算した結果です。ΩΛ(暗黒エネルギーが宇宙の全エネルギーに占める割合)を変えて計算した結果です。ΩΛが70%程度を占めていると、観測をよく説明できることがわかります。 暗黒エネルギーが存在する、それが判明しただけでも天文学にとってだ事件です。それだけでなく、宇宙のエネルギーの半分以上を支配していることまでわかったのです。これは、今なお宇宙論研究の中で最大のミステリーなのです。

これまでの研究

図2 温度の変化


暗黒エネルギーについては、物理的性質は全くつかめていないので、様々なモデルが提案されています。その中には、光と相互作用を持つような可能性も充分考えられるわけです。 この研究室では、光と相互作用をもつような暗黒エネルギーモデルが宇宙進化に与える影響を調査しています。図2は光の温度と物質の温度の時間変化を表したグラフです(正しく言うと、横軸はスケール因子と呼ばれる量で、お互いの重力が十分無視出来るほど遠くに離れた2つの銀河が、宇宙膨張でどの程度離れていくかを表します。スケール因子は、時間で増加するので横軸は時間に対応するわけです。)。実戦が、一般的なビッグバンモデルで計算した結果で、破線が暗黒エネルギーと光が相互作用をするモデルで計算した結果です。どちらの温度も過去で低くなっていることがわかります。これまでの研究の結果、分子形成や宇宙マイクロ波背景放射のゆらぎに与える影響などを調査しています。

研究論文

  • Effects on the Temperatures of a Variable Cosmological Term after Recombination
    • K. Kimura, M. Hashimoto, and K. Arai
    • The Astrophysical Journal, Volume 561, Issue 1, pp.L19-L22, 2001年
  • Effects of a Decaying Cosmological Term on the Formation of Molecules and First Objects
    • M. Hashimoto, T. Kamikawa, and K. Arai
    • The Astrophysical Journal, Volume 598, Issue 1, pp. 13-19. 2003年
  • Cosmic microwave background constraints on a decaying cosmological term related to the thermal evolution
    • R. Nakamura, M. Hashimoto, and K. Ichiki
    • Physical Review D, vol. 77, Issue 12, id. 123511, 2008年
  • Constraints on a Vacuum Energy from Both SNIa and CMB Temperature Observations
    • R. Nakamura, E. P. Berni Ann Thushari, M. Ikeda, and M. Hashimoto
    • Advances in Astronomy, vol. 2012, id. 528243, 2012年


脚注

  1. 密度を体積で割った量。宇宙の大きさは膨大なので、エネルギーではなく密度で考えることが多いのです。
  2. 空間がどれだけ曲がっているか、を表します。空間が曲がっていると言われても、SFチックでピンと来ないかもしれません。ですが、実は私達は「地球」という『曲がった二次元空間』の上で暮らしているのです。
  3. 元々等級は、人の目に見える星で1番明るい星を1等級、一番暗い明るさを6等級と決めているので、小さいほど明るいという量になるわけです。
  4. こんなことを書くと「相対論は間違っているんだ」って誤解をしてしまうかもしれませんが、そういう訳ではないです。例えば、ニュートン力学は、光速に近い運動をしている場合や、非常に強い重力場では成り立ちません。それと同じように、非常に大きい宇宙論的なスケールには、相対論を適用出来ないのではないか、という意味です。

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